

Story
1960年代のイタリアのデザイン界を、鮮烈に駆け抜けたイタリア人デザイナー、ジョエ・コロンボ。コロンボは60年代においてすでに「機能」と「構造」を重視した未来志向のデザイン哲学を打ち出した先駆者です。彼の提案は、現代のミニマリズム、モジュール構造、空間効率を重視したデザインの原型とも言えるものでした。
1970年、現代まで引き継がれる名作・ボビーワゴンがMoMAのパーマネントコレクションに収蔵されると、コロンボの名は世界を巡りました。翌1971年、41年という短い生涯を遂げるまで彼が没頭したのは、「どんな人の生活にも投影できる製品を作ること」でした。
ジョエ・コロンボによるARNO GLASS(アルノグラス)は1963年、30年代のイタリアの独裁政権下で、量産に不向きな形状などを理由として一度は淘汰されたスクエアカップを、コロンボが「未来的な構造」として再構築したテーブルウエアです。変色しにくく、頑丈でありながら、高い透明度と美しい輝きを放つクリスタルガラスを使用したARNO GLASSは、北イタリアのガラス産業の中心地であるフィデンツァ(FIDENZA VETRARIA)工場で製造されていました。
長い時を経て現代に蘇ったARNO GLASSは現在のライフスタイルや使用環境に対応するため、容量や細部ディテールを一部調整し、より実用的に機能性をアップデートしながらも、オリジナルのフォルムや精神を尊重しています。
そして現在も、1960年代初頭、イタリア・フィレンツェで誕生したヴィンテージ作品と同じ工程・同じ金型を使用して、すべて手作業であるハンドプレスで丁寧に製作されています。

ジョエ・コロンボの言葉と、ARNO GLASSが受け継ぐもの
- Design Should Eliminate The Superfluous And Emphasize The Essential.
「デザインとは、不必要なものを削ぎ落とし、本質を際立たせるべきである」
無駄を省き、本質だけを残したデザイン。感性と実用性の洗練されたバランスがここにあります。
- The future is not decoration — it is function.
「未来に必要なのは装飾ではなく、機能である」
装飾ではなく“使いやすさ”に重点を置いたカップ&ソーサーは、 ジョエ・コロンボが目指したモダンな機能主義の体現です。
- I imagined living units that are compact, functional and aesthetically clean.
「私は、小さくて機能的、そして美しく整った生活ユニットを思い描いていた」
小さなカップひとつにも、コロンボの思想が息づいています。グラスはただの器ではなく、日常を支える“生活オブジェ”であるべきなのです。
- A home should be a flexible machine for living.
「住まいは、柔軟に機能する“生活のための機械”であるべきだ」
モジュール構造と柔軟なスタッキング機能を備えたARNO GLASSは、変化する日常に寄り添い、しなやかに対応するリビングシステムとして機能します。


スタッキング構造の実用性と美しさ
ARNO GLASSは「構造こそが機能である」というジョエ・コロンボの哲学、積み重ねの美学に基づき、垂直に精密に重なる構造設計をデザインの特徴としています。
カップ同士が正確に重なるよう設計されたスタッキング構造は、収納性と整理のしやすさといった日常の実用性を大きく高めるだけでなく、積み重ねたときに生まれる視覚的な秩序と安定したシルエットを生み出します。テーブル上では、それ自体がひとつの美しいオブジェとして機能します。
ARNO GLASSの美しさは、コロンボの代表作TUBE CHAIRやBOBY TROLLEYなどで示した「積み重ねの美学」の延長線上にあります。カップの直径・角度・重心まで計算し尽くされたデザインは単なるガラス器ではなくまさに「構造としての美」を体現するものです。
現代的にリプロダクトされたARNO GLASSは、オリジナルである1960年代のヴィンテージ製品のスタック比率を忠実に再現し、 その精神と美意識を現代に受け継いでいます。
